対神戸戦(08−29)。

野村克也さんのお言葉を借りるならば。


 「負けに不思議の負けなし」。


ですね。


 どんなにポテンシャルを持った個を戦力として保有していたとしても,それだけで勝負に勝てるはずなどなくて。「チーム」として同じ方向を見ることができなければ,その持っている個が相乗効果を生んではくれません。同じ方向を見るための軸。戦術とはそういうものだと思うのですが,指揮官はその軸をしっかり意識付けしているのでしょうか。むしろ,軸がシーズンを通じて失われ続けてはいないでしょうか。


 ひとりひとりのファイトが,チームとしてのファイトに結び付かないのだから,どこかチグハグで,バラバラなフットボールになってしまう。そんな状態で,結果を引き寄せようとしてみたところで難しい話としか言いようがないでしょう。「勝ち点3」を上積みすることが厳しく求められるゲームではありましたが,「勝ち点0」という結果は妥当と言う以外にない,と感じます。


 神戸戦であります。


 端的に。


 攻撃,の前段階があまりに不明確でした。ボールの奪い方,であります。


 最終ラインへ落とし込むのか,それとも高い位置でボールを奪いに掛かるのか。落とし込むにしても,高い位置でボールを奪うとしても前線から中盤にかけての守備意識が連動してくれないと難しいものがあると思うのですが,今節は相手ボール・ホルダーを自由にしている時間帯が多かったように感じます。


 たとえば戦術交代を見ても,ダッグアウトがどれほど明確なボール奪取へのイメージを描いていたのか,疑問に思ってしまいます。プレッシングのギアチェンジを意図した,とも見えますが,実際にボールの奪い方が変化したとは感じられませんでした。守備意識を交代意図に据えるのであれば,トップからの守備を意識していた選手が対象となるのは理解に苦しむところです。さらに,中盤省略という「相手が待っている」形へと嵌り込むような仕掛けに終始してしまったことで,この戦術交代の意図もどこかに置き忘れられたような形です。


 また,後半開始直後の時間帯は守備意識の不明確さがリズムを手放す要因にもなっているように思います。


 前半,相手は中盤をフラットに構成する4−4−2をパッケージとしていたように見えます。そのパッケージを後半の立ち上がりから4−3−3に変化させていきます。恐らくは,中盤の左肩を持ち上げるようなイメージでありましょう。


 このパッケージ変更への対応がいささかまずかった。


 3だと,まったくの数的同数。だからと言って,アウトサイドが同時にラインに入ってしまうと,中盤のプレッシャーが低下してしまいます。この段階で,相手が描くゲーム・プランに対して後手を踏んだように見えます。


 また,相手はボールの奪い方に対してかなり明確なイメージを描いていたようです。最終ラインにまでボールを追い込むのではなくて,ディフェンシブ・ハーフのエリアが攻撃への切り替えポイントとして位置付けられていたな,と。そのポイントに,引っ掛かってしまった。


 攻撃面でフィニッシュへと持ち込めない。ボールを奪われた直後,ボール・ホルダーへのアプローチで緩さがある。カウンターをどのようにしてディレイさせるか,そのイメージが明確なものとなっていない。中途半端に最終ラインへとボールを落とし込むような守備イメージが残ってしまっている。


 チームとして持っているべき軸が複数抜けてしまっているような状態,と言うべきでしょう。


 そんな状態で,守備的な安定性も,連動性ある攻撃も描きようがない。


 「根は深い」というコメントは,決して過剰な表現ではないでしょう。チームの方向軸が安定しないから,ひとりひとりの見ている方向がブレを生じ,結果としてチームがブレてしまう。「約束事」なきフットボールを,シーズン終盤にしてピッチから感じる。愕然とする思いでした。