反対側から見えるもの。

比較的,長めのコラムを書かれるひとだ,という認識を持っています。


 定点観測の対象を持っているライターさんですし,恐らくは個人的な好悪もあるはず。ですが,意外なことに文章からそんな感情が「ムダに」見えている感じが薄い。あえて感情面を押し出す文章作法を持っているひともおられるし,それはそれで面白いけれど,バランス感覚を持ったライターさんだな,という印象を持っているわけです。


 いつだったか,真正面からこの方のコラムを扱ったこともあったかと。ということで,今回は視点を反対側へと持っていって,後藤さんのコラム(スポーツナビ)をもとに。


 確かに,敵将のコメントはナイーブに過ぎるものでした。また,選手のコメントもナイーブさを感じるものでもあります。FC東京に欠けている要素を,そのまま裏返したようなものですから。


 必要最低限に気になることを言うならば,「誰がクラッチを蹴飛ばすのか」が見えていないように思うのです。
 ギアチェンジをするためには,その予備動作としてクラッチを蹴飛ばす(クラッチ・プレートをいたわるためには,しっかりとペダルを踏み込む方が当然いいのですが,レースなどに使われるドグ・ミッションならばトルク変動を与えてやるだけでギアを変えられる,というわけです。)必要があります。その役割を,誰が率先して引き受けるのか,あのゲームからは見えていませんでした。
 欧州選手権でのスペインは,誰もがクラッチの重要性を理解していて,仕掛けを加速させるべきポイントでは積極的にクラッチを蹴飛ばすかのようなプレーへと変化していました。スペイン的なフットボールを本当に指向するのならば,この部分に対する意識をどう徹底するかが問われるものと思うのです。


 さて。軸足である浦和の話に戻しまして。


 なかなか鋭いスカウティングだな,と思ったのは,
 さんざんチーム状態がよくないと批判されている浦和だが、昨季からどこが変わったのか。メンバー表を見れば答えは明らかだ。これまでは新顔同士のコンビだったがFC東京戦では、昨年までのメンバーが2トップの片割れに入ったことで、FWの機能性はかなり回復している。

という部分です。


 ・・・「ムダに」は感情が出てないと思うけど,「片割れ」ってのはやっぱりね!と思う表現ですな。細かいですけども。
 それはそうと。ちょっと抜粋させてもらいましたが,センターラインの変更がチーム・コンディションに悪影響を与えていたのが今季の立ち上がり,と見るならば,FC東京戦におけるパッケージは07スペックからのモディファイを最低限にとどめるための処方箋,そのひとつだと思うのです。
 08スペックを煮詰め,同時に新戦力を早期にチームにフィットさせるためには,というロジック・フローがあったのかも知れませんが,07スペックを構成していた基盤にも変更が加えられているわけですから,チームがゼロ・スタートに限りなく近い状態になってしまった。そもそも,浦和のスタイルを吸収すべき選手が,ファースト・ディフェンスという部分で機能するか,と考えれば疑問が残ります。となれば,(コンディション面で問題がないのであれば)浦和のスタイルを皮膚感覚で知る選手を組み合わせる方が,間違いなくロジカルです。


 恐らく,後藤さんの観察は,そのままコーチング・スタッフの観察にもつながっていくものと思います。と言いますか,そうあってもらわないと困るわけです。
 FWに関して道筋が付いたとすれば,チームに残される課題は絞られてきます。コンパクトネスを維持しながら,攻撃面,及び守備面でのリンクを90分プラス押し切ることが求められるポジション。そのポジションと,守備ブロックとの連携ですね。


 後半のスローダウンは,プレッシング・ポイントが不明確になることと同時に,相手ボール・ホルダーを追い込みきれていないことも影響しているはずです。この課題をクリアできれば,チーム・コンディションは安定してくるのではないか,と思います。