シード校決定(第87回全国高校ラグビー)。

アウトサイドから眺めれば,確かに変化を感じ取るのは難しいかと。


 それこそ,ノンシードを含めて強豪校の位置付けは変わらなくて,「無風」が続いているのではないか,と思いたくなるような。
 とは言え,代表校という立場を勝ち取るためには,相当厳しい戦いを勝ち抜いていかないとならないのも確かなことです。代表校の裏には,間違いなくライバルがいます。そして,代表校を決定する決勝戦にはスコアが示す以上に小さな,文字通りの「僅差」がある。その僅差を自分たちのものにするチカラこそが,代表校との分かれ目になるのではないか,と。


 ということで,フットボールでも楕円球方面の話。高校ラグビーでのシード校決定という話を,こちらのページ(高体連ラグビー専門部オフィシャル)をもとにしながら書いていこうと思います。


 さて,ちょっとAシード校を書き出してみますに,


    桐蔭学園高校(神奈川県代表・3年連続7回目)
    伏見工業高校京都府代表・2年ぶり17回目)
    東福岡高校(福岡県代表・8年連続18回目)


ということなのでありますが,この謎解きをしますればMSN産経さんの記事にあるように,熊谷で開催された,新人を対象とした「ラグビーセンバツ」の優勝,準優勝とベスト4であるわけです。


 チームとしての継続性を思えば,確かにおかしい話ではありません。


 ですが,チームの「伸びシロ」は高校チームでは予想を超えるものがあります。と言いますか,「新人戦」の色彩が強い熊谷よりも「花園」を意識したチーム・ビルディングをしてくる高校の方が多くもある。この時期にシードであることが,意外にも難しいのです。
 たとえば,Aシードである伏見工業高校でありますが。
 この高校の歴史であったり実績などを思えば,Aシードに名を連ねることに対して何の不思議もないわけですが,「2年ぶり」というフレーズには,京都府予選の厳しさであったり,強力なライバルの存在があるわけです。京都成章高校,であります。決勝戦ではこの2校が真正面からぶつかり合い,ファイナル・スコアは17−5。フットボール的に考えれば,限りなく“one-nil”に近い,僅差のゲームと考えてもいいように思います。


 局面ベースで見れば,恐らくは互角。


 流れが傾きかけた時間帯に,その流れを巧くつかみ取ることができたかどうか,逆に相手に傾きかけた流れを引き戻せたかどうか,という部分が,代表校決定に際して作用していたのは間違いないところでしょう。
 実際的な部分を見れば,シード校と言えどもスムーズに予選を戦ってきたわけではない。その現実を思えば,「シード校の壁」は思うほどには厚く,高いとばかりは限らないと言えるのではないでしょうか。技術的な部分での差,と言うよりは,恐らくはどれだけ積極的にチャレンジできるか,あるいは自分たちのラグビーをフィールドに表現できるか,という「心理的な側面」がノンシードにはより強く求められるのだろう,と思うのです。


 ・・・ドローもされていないのに(ましてや本戦など始まってもないのに),かなり気の早い話ですが。


 2回戦へと勝ち上がっていったノンシードには,シード相手,などと萎縮することなく戦ってほしい。なにより,自分たちだってシード校と同じように厳しい地区予選をくぐってきているわけだし,その後ろには複数のライバルがいるはずです。敢えてプレッシャーを掛けるようなことを言うならば,彼らのプライドだって背負っているはずです。そのライバル目線で言うならば,ラグビー・スタイルをシード相手に表現できないような,メンタルの弱いチームに地区予選で負けたなど,許せる話ではないわけです。
 確かに,Aシード,Bシードとして登場してくるチームは積み重ねてきた実績を評価されてシードという立場を手にしています。ですが,試合が行われるタイミングでの実力関係までを示しているものではないし,そもそもトーナメントで何かをすでに獲得しているわけではありません。


 誰もが,同じ目標を陥れようとしている「チャレンジャー」なのです。


 それだけに,「アップセット」という言葉は適当ではないと思っています。コトはシンプル。シードとノンシードの間には「壁」がある,などと思わせない立ち上がりからの真っ向勝負を期待したいところです。