30回目のル・マン式と#34。

最も耐久レースらしい,スタート風景かも知れません。


 スタートを担当するライダーは,レーシング・マシンが止められているピットウォールとは反対側,メイン・スタンド側のランオフ・エリア付近に待機しています。スタートを担当しないライダーは,と言えば,ピットウォール前に駐められているレーシング・マシン,そのシート・カウル部分を支えています。通常のレースならば,レッド・シグナルが順番に消え,すべてのシグナルが消えた時点でスタートということになるのですが,このレースではカウントダウン・タイマーが使われます。
 カウントがゼロになると,同時に待機していたライダーはマシンへと駆け寄り,エンジンをスタートさせ,マシンを加速態勢へと持ち込んでいく。


 レースを見ているアウトサイダーにとっては魅力的な部分が多いスタート方式ですが,実際には神経を使うものだとも思います。必ずしも予選順位を忠実に反映することがないし,スタート・ダッシュに成功したチームはスムーズに1ターンへと入っていけるけれど,予想外の渋滞に巻き込まれてしまうと,最悪のケースではマシンにダメージを負ってしまうこともある。その意味では波乱を呼び込みやすいかも知れません。


 いわゆる,ル・マン式と言われるスタート方式です。そんなスタート方式を採用している耐久レースが,7月最終週に開催されます。「鈴鹿8耐」です。





 もちろん,ワタシが注目しているチームは,トルネード・カラーをカウルにまとうチーム,であります。2007シーズンの鈴鹿8耐に向けて,ヨシムラは“ほぼワークス”という体制を組んできています。そんな関係を示すのがゼッケン・ナンバーではないか,と思っています。


 ヨシムラというレーシング・チームを示すゼッケン・ナンバーは#12であります。


 比較的繊細な印象を与えるダブル・クレードルフレームに油冷エンジンというコンビネーションを採用していたGSX−R時代も,その後のツインスパー時代も,そしてGSX1300R(Hayabusa)をレーシング・フィールドへと持ち込んでいた時代にも,ヨシムラのマシンにはブルーに着色されたライト・カヴァと#12が代名詞でありました。その伝統は今季にも受け継がれています。


 もう1台のマシンには,#34が選ばれている。このナンバーは,どちらかと言えば“スズキ・ファクトリー”の血脈を強く感じさせるナンバーです。
 かつて,2ストローク・500ccマシンでGPが戦われていた時代,スズキのエース・ナンバーは#34でありました。ケビン・シュワンツ選手がAMA時代から使っていた番号を,GPでも使っていたわけです。そのナンバーを記憶している人間にとっては,かつてのエース・ナンバーがWSBに参戦している加賀山選手とともに鈴鹿に参戦する,という時点でちょっとした期待があるわけです。


 鈴鹿8耐の前哨戦となる,鈴鹿300?耐久では加賀山就臣秋吉耕佑ペアは存分にGSX−R1000が持つ「速さ」を見せ付けるものの,“ガス欠”トラブルに見舞われてしまい,リタイアを喫してしまいます。鈴鹿8耐は「耐久レース」的な要素を強くするレースではなく,“スプリント”を8時間繰り返すような、「速さ」を武器としなければ勝負権を手にすることのできないようなレースへとその姿を変えています。そんな部分を考えると,「攻め」の姿勢を貫いてきたことは評価すべきかも知れません。


 いずれにせよ。この週末が楽しみであります。