ひさびさのアンカー。

ユニフォームはプーマか!


 なんて確認してしまうひともいるかも知れない(なことはない)。そもそもレースアップじゃあないし,凝ったジャカード・フィニッシュでもない。


 前後分断型のカウンター・フットボールか!


 なんてことが頭をよぎったひともいるかも知れない(こっちはあるかも)。実際には,カウンター・フットボールとは違ったアプローチで仕掛けてきましたですな。


 ハンス・オフトさんが指揮を執っていた時期は,ツイン・アンカーを構成しておりました。それまでディフェンダーとしてのイメージが強かった内舘選手を,ディフェンシブ・ハーフとして起用する,というのは何ともタヌキな発想だな,と思いつつ,実際には当時のパッケージを思うと,すごく効果的な起用法だったな,と思います。
 ただ,就任当初攻撃面を強く意識していた前任指揮官にとっては,このディフェンシブ・ハーフのコンビは守備面にウェイトが置かれているように映ったかも知れません。ツイン・アンカーから啓太選手のシングル・アンカーへと基盤が変更され,内舘選手もディフェンダーとしての姿に戻った,という感じでありました。


 でありますれば,正直予想外であったのも確かです。


 円陣が解かれ,選手たちがポジションへと散っていく。そのときに,内舘選手が入ったポジションは,かつて見慣れたポジションでありました。ディフェンシブ・ハーフのポジション,つまりはアンカーであります。恐らく,実戦での強烈な負荷を経験していない守備ブロックの構成を考えてのことなのでしょう。


 この指揮官の意図に,シッカリと応えていたのではないか,と思います。
 ボール奪取のポイントが中央と言うよりは,アウトサイドに置かれていたからか,相手のパス・コースを絞り込むようなプレッシングであったり,積極的にボール・ホルダーにアプローチしていく,という姿はなかなか見られませんでしたが,攻撃を組み立てるときのボールの散らし方には,視野の広さを感じられたし,かなり効果的だったかな,と思います。


 また,内舘選手で最も驚かされたのは,足元のコントロール性でした。
 大きくボールの展開を切り替えるとき,どうしても強めのパスが繰り出されるところがあります。そのパスを収めるときに,トラップが不安定だとどうしてもボールが前方へと大きく動いてしまうはず。はずなのですが,内舘選手の足元のコントロールはすごくしなやかで,強めのパスが来ているはずなのだけれど,ボールの勢いをシッカリと消していた。


 ドローという結果を思えば,MVPなんて表現は合わないのかも知れないけれど。このゲームで最も印象に残ったプレーをしていたMIPは,個人的には内舘選手でありました。