If you are first.

リヴァプールに多くのシルヴァーウェアをもたらしたのは,確かに後任であるボブ・ペイズリーさんです。


 ですが,コップの住人たちに強い印象を残しているのは,ゴールデン・エイジの基盤を構築した名指揮官,ビル・シャンクリーさんであることは間違いのないところでしょう。そのシャンクリーさんが残した言葉に,次のようなものがあります。

 “If you are first, you are first. If you are second, you are nothing.”


 あまりに強烈な印象を残す言葉ですが,日本語にするのが案外難しいような気がします(意訳するならば,「1位であることが大事なのであって,2位に入ったとしても何も残らない」,という感じでしょうか。)。そこで,ちょっとこの言葉を理解しやすくするためにちょっとした操作をしようと思います。いきなり意訳するよりも,英語でひとひねりした方が,本当にシャンクリーさんが伝えたかったのだろうことを理解しやすいような感じがするのです。


 つまり,“you are first”という部分を“you win”,そして“you are the winner”と読み替えてみるわけです。加えて,“you are second”というフレーズを“you lose”と表現し直してみる。


 何か見えてきたのではありませんか?


 「勝利をつかむことができれば,君たちは勝者となり,首位に立つこともできる。しかし,2位に終わる,あるいは眼前のゲームを落とすようなことがあれば,最終的には何も残らない」。


 まさしくギドが言う「勝者のメンタリティ」を端的に示す言葉であることが理解できるところでしょう。どのメディア経由だったかは思い出せないのですが,ギドは「敗北は悪である」というコメントを残していると聞き及んでいます。このことは,シャンクリーさんが言う,“If you are second, you are nothing.(=2位に終わり,後塵を拝するようなことがあれば,何も残らない)”というフレーズとほぼ相似形を描くものだと思うのです。


 もちろん,敗北の中から何かをつかみ取ることがなければ,チームとしての進化はあり得ません。ですが,「勝ち点」という客観的な数字だけが支配する世界にあって,ことさらに内容面だけを重視し,敗北を受け入れているわけにはいかないのも,また確かなことです。「内容面でも進化の可能性を追い求めながら,同時に現実主義的に結果を追い求めていく」という,究極の「二兎」を追っていかなければならないのが,リーグ戦というものかな,と思うわけです。


 リーグ最終盤となり,リーグ戦がカップ戦と同じような位置付けになってくる時期です。最終節を決勝戦と想定すれば,次節は初戦と同じ位置付けになるわけです。「高み」を陥れるための闘いは,ある意味で負けたらその時点で山を登ることが不可能になるトーナメントのようなものです。ひとつひとつのゲームが,大きな意味を持ってくるわけです。そんな,カップ戦と見紛うかのようなリーグ戦を駆け抜けるために,チームを再び加速状態へと持ち込む。相手のコンディションやスタンディングなどは基本的に関係ない。ただ,自分たちが持っているフットボール・スタイルを徹底的に押し出すことで,相手からリズムを奪い去ればいい。そして,求めるべきは「勝ち点3」という厳然たる結果のみにある。


 シャンクリーさんが言う“first”であるために,いままで以上に自分たちのフットボール・スタイルにこだわり,そして「勝ち点3」という結果にこだわっていってほしい。そう思うわけです。