予備動作。

自転車(あるいはバイクでも)に乗っていて,カーブを曲がろうとするときどういう動きをしているか,ちょっと思い出してみてください。


 「曲がりたい方向へとハンドルを切る」。確かに。


 ですが,単純にハンドルを切るだけで曲がれるかというと,相当ギクシャクするというのがホントのところだろうと思います。あるポイントを超えると,ハンドルは急に切れ込みますから,フロントサイドから転倒してしまうことにもなりかねない。そこで,車体を曲がりたい方向へと(程度の差こそあれ)傾けていくことになります。


 この傾けていくときのこと。


 最初から曲がりたい方向へと傾けていくよりも,1回曲がりたい方向とは逆方向への体重移動を軽く仕掛けてから,本来の方向へと車体を傾ける方が,圧倒的にスムーズにいくと思います。


 ごく単純に言ってしまえば,「予備動作」を挟み込むことで本来の動きをスムーズに引き出してやるということを,自転車(であったり,バイクであったり)に乗っているひとたちは自然とやっている,ということになるわけです。


 この予備動作,いまの浦和でもホントは重要なことかな,と。


 リズムを失いかけているときの浦和は,予備動作なしにカーブへとアプローチしているような感じがします。車体そのものが持っているコーナリング性能が決して低いわけではないから,フロントからスリップダウンする(守備ブロックに決定的なクラックが発生する)確率は低いものの,決してスムーズとは言えない。


 体重移動の役割をしっかりとミッドフィールドが担えるかどうか。


 いまの浦和が,戦術的に進化できるかどうか,という部分は攻撃面での組織練習もひとつの柱かな,とは思いますが,それ以上に,どういうボールの奪い方をチームとして意識するのか,などという“チームとしての戦術イメージ”に負っている部分が大きいような感じがするのです。
 と言っても,単純に2004シーズン(セカンド・ステージ)のように,徹底した前線からのプレッシングを仕掛け,ボール奪取から速い攻撃を仕掛けてほしい,というわけではありません。相手の出方や時間帯に応じて,ボール奪取を強く意識したプレッシングを仕掛けていくのか,それとも,ディフェンシブ・ハーフや最終ラインが余裕を持ってボール・ホルダーに対して守備応対できるように,パス・コースを絞り込んでいくようなプレッシングを仕掛けていくのか,ズレのない戦術的なピクチャーを描いてほしい,と思うのです。それは,MDP(287号)に掲載されている小齊さんのコラム(“FORESIGHT”)で取り上げられているテーマと重なるものだと思います。


 坪井選手は小齊さんのインタビューに答えて,戦術的なピクチャーがどれだけ明確に選手たちの間で描けるか,という部分が進化の方向性,というようなニュアンスのコメントを残していることが,小齊さんのコラムからはうかがえます。


 確かに,いまは「勝ち点3」がファースト・プライオリティであることは言うまでもありませんが,水面下ではチームが進化をしていく,そのきっかけのようなものが生まれてきている。リーグ戦終盤,シビアな戦いを通じてチームが進化していくことができるとすれば,このことも勝ち点同様,大きな意味を持つと思うのです。