Engine.

エンジンを構成するパーツひとつひとつも,確かに重要です。


 カムシャフトの特性にはじまり,ピストンの材質や形状など,あらゆる要素がパワーを引き出すためには必要不可欠です。
 ですが,ひとつひとつの特性が最高出力へと直結するわけではありません。また,それぞれのパーツの組み方によっても,狙ったパワーが引き出せるかどうかが違ってきます。丁寧な仕事ができるならば,クリアランスはギリギリまで詰めていくことができるし,組み上がったあとのラッピング(慣らし運転)を経てフル・パワーを絞り出すことができる。


 ただ,パーツを集めただけでは性能を引き出せない,意外と複雑なのがエンジンであるように感じています。
 と,いつものように,長めのマクラを持ってきましたが。


 今節の先制点奪取の場面には,丁寧に組み上げられたエンジンのような印象を受けたわけです。堀之内選手が積極的に前線へのオーバーラップを仕掛けることができる,ということは当然ながらディフェンシブ・ハーフのバックアップが背景にあるはずです。そして,前線へのオーバーラップを単発的に終わらせるのではなく,戦況を冷静に判断しながらポジショニングする。
 一方で,アウトサイドのアレックス選手とセンターに構えているシンジ選手のコンビネーションはワンタッチ・パスの交換によって相手守備ブロックのギャップを突くという,スムーズさを存分に表現するものでした。


 この2つの要素がかみ合うことで,“先制点”を引き出せた。


 誰かひとりが圧倒的な存在感を放つ,という形ではなく,ユニットという意識をベースにしながら互いのタレントを引き出すことで,攻撃を作り出していく。


 確かに,連戦によるコンディション低下という問題もあって,90分間安定したパフォーマンスを維持できてはいないけれど,2006シーズン・スペックが熟成されていったときのチームの姿は先制点の場面に表現されていたのではないか,と思います。チームとして描くべき戦術的なピクチャーを,実際にピッチ上に表現することに成功したのならば,今度はそのイメージを増幅させるとともに,コンディショニングによって安定したパフォーマンスを引き出せるようにすること。
 となれば,さらに魅力的な“エンジン”(チーム)を見ることができるのではないか。そんな感じがするのです。