対ドイツ戦(テスト・マッチ)のことなど。

やっとプライマリー・セットが決まったか!というゲームでした。


 いままでのゲームは,どこかにアンバランスさを残すものであったように思います。


 前線から積極的にボール・ホルダーを追い込み,数的優位を構築しながらボールを奪取する。そこから手数をかけずにボールをペナルティ・エリアに持ち込み,フィニッシュへの形を作っていく。攻撃陣はどちらかと言えば,“ハーフコート・カウンター”のような戦術イメージを描いているのかな?という部分がありました。
 ですが,どういう形でボール・ホルダーを追い込んでいくのか,どこに追い込んでいくのかという部分が不明確であり続けたためか,相手ボール・ホルダーに対するプレッシャーが不十分なままに自陣深い位置への進入を許すという部分があったような。


 そのせいか,最終ラインが積極的にラインを押し上げることで,全体をコンパクトに維持するという部分がなかなか成立しなかったように思うわけです。


 で,この課題はなかなか解決へと進んでいかなかった。のでありますが,やっと今回のテスト・マッチでチームとしての戦術的なイメージがフォーカシングされたような感じがします。攻撃面と守備面でのバランスを維持できる距離感を探り当てたと言いますか。鋭い動き出しを可能にするアジリティと,正確性の高いパス・ワークを成立させる高いテクニカル・スキルを存分に生かすためには,あまり全体が広がってしまうよりも,ある程度コンパクトな陣形を維持する中で,相手を翻弄するような動き方を意識していく方が効果的。その意味で,このゲームで具体的な収穫があったなと感じます。


 ただ,この時期ですから“トラブル・シュート”すべき部分が明確になったこともテスト・マッチとしてしっかり機能した証拠だろうと思います。というわけで,消極評価の部分を考えますと。


 プレッシングがしっかりと機能しない時間帯をどうマネージするか,という部分がまずは指摘できるかな,と。失点のきっかけとなったファールは,前線からのボール・ホルダーへのプレッシャーが中盤の選手と連携を保った形ではなく,単独でのボール・ホルダーへのアプローチにとどまってしまったという部分が導いた部分もあります。
 ボール奪取が難しいのであれば,最終ラインとディフェンシブ・ハーフで構成される守備ブロックがある程度の余裕を持って守備応対できるように追い込みをかけていく,というイメージでも良いはずです。ボール奪取というイメージをさらに発展させて,ボール・ホルダーを守備ブロックの網に追い込んでいくというイメージをも熟成させていくべきところかな,と。


 もうひとつ言えば,どうゲームをクローズするかという部分から「高さ対策」を考える必要があるかな,と思います。フィジカル面でのハンディを跳ね返すのであれば,前任指揮官時代のアイディアでもあるけれど,ライン・コントロールなどの駆け引きを繰り返すことで相手に対する心理的なプレッシャーをかけていくことなど,修正に向けたポイントは残されているように感じます。


 オーストラリア,クロアチアに対してウィーク・ポイントを露呈したようなもの,という見方もありましょう。
 ただ,そういうウィーク・ポイントを徹底的に洗い出すためにフットボール・ネイションとのテスト・マッチを組んだのだと思いますし,まだ課題をクリアするための時間は残されてもいる。100%の解決とはいかずとも,決定的な破綻を生じないまでの修正を図ることは十分に可能でしょう。
 それだけに,ポジティブな部分,ネガティブな部分を含めて意味あるゲームになったと思うわけです。