対大宮戦(06−10)。

Derby Match”という特殊性がそうさせたのか。


 ファイティング・スピリットが通常のリーグ戦以上に前面に押し出されたように感じます。それだけに,攻撃面よりも守備応対に関する部分が目立ったゲームであったように思います。


 であれば,いつもとはちょっとだけ視点を変えて,「守備ブロック」を中心にしてゲームを見ていこうかと思います。


 まず,相手は4ー4−2システムを採用し,アウトサイドを徹底して抑え込むことを意識したゲーム・プランを持っていたように思います。その意味で,攻撃的な意図を持ったアウトサイドと言うよりも,ベースとしてアウトサイドを抑え込むというタスクがあり,攻め込めるタイミングを慎重に図りながらアウトサイドを攻撃の起点として意識する,という感じだったのではないかと思います。ちょっと具体的に書けば,サイドバックミッドフィールダーのコンビネーションによって数的優位を構築することでアウトサイドを攻撃の起点とさせない,という意識が徹底されていたように感じます。
 そのためか,浦和のアウトサイドは今節においてはあまり機能したとは言えないように思います。アウトサイドが良い形でボールを保持できないために,攻撃が今節においては中央に偏った形になり,センターバックとディフェンシブ・ハーフで構成される守備ブロックが仕掛けた網にかかってしまうことで攻撃をしっかりとフィニッシュで終えることができない。むしろ,相手にトランジションのためのポイントを提供してしまう局面が比較的多かったようにも感じます。


 対して浦和がベースとしているのは3バックですが,今節に関しては“ハイブリッド・システム”的な時間帯が多かったのではないか,と感じます。


 相手2トップに対しての守備応対は,基本的にはバックラインを構成する3人のディフェンダーです。しかし,攻撃的な要素を考えるとセンターに入っているディフェンダーはタイミングを図りながら積極的にポジション・チェンジを仕掛けていく。そのときのカバーリングのイメージがディフェンシブ・ハーフとしっかり共有されているために,“守備ブロック”が決定的な数的不利に陥る時間帯がそれほどない。今節は,中央でのポジション・チェンジとドリブル突破によって相手守備ブロックにクラックを生じさせるというイメージの攻撃だったように感じますが,同時にしっかりとした守備意識があったように思えます。
 また,今節に関してはアウトサイドがあまり攻撃面では機能しなかったということの裏返しでもあるのですが,4バック・システムでのSB的な要素をアウトサイドが持っていた時間帯も多かったように感じます。キックオフ,あるいはリスタートのタイミングでは確かにイニシャルの3バックであることをはっきりと感じ取れるように思いますが,実際にゲームが動いているタイミングでは,“3.5バック”(3バックと4バックの中間形態)が中央とアウトサイドを巧みに抑え込むことで,守備が決定的な破綻に陥らないようにリスク・マネージメントをしていたような感じがあります。


 ・・・いつものように1日遅れでありますが。


 浦和にとって,縦に対するスピードと同様に重要な「もうひとつのアクセント」が見えてきたのが今節だったかな,と。プレー・スペースを徹底的に消し去ろうとする相手に対してどうスペースを切り開くのか,というのが今季における大きな課題だろうと感じます。


 ひとつの打開策が,「縦」に対するスピードを強く意識した攻撃でしょう。


 ショートレンジ〜ミドルレンジ・パスを細かく交換することで相手のマークを微妙にずらしながら,アタッキング・サードへとじっくり攻め込む。今季の浦和の攻撃は,基本的にビルドアップからの遅攻だと思います。そのベースだけではなく,ある種のDNAである「縦へのスピード」を上手に織り込むことで,相手守備ブロックを自陣に押し込み,中盤が十分に機能できるだけのスペースを切り開いていく。そんなイメージを見てみたい,というわけです。


 そしてもうひとつが,やはり浦和のDNAとも言える“ドリブル”だろうと。


 パス・ワークでは崩しきれない組織的な守備ブロックを,独特のリズムとステップ・ワークで切り裂きにかかる。
 確かにドリブルはチーム戦術の中核を担いうるものではないですが,だからと言って決して軽視して良いものでもないように思います。時間帯によってはゲームのリズムを変えるための重要なアクセントであり,時には局面打開のための決定的な武器にもなり得る。ある意味では当然のことなのだろうけれど,チーム戦術は勝利と敗戦を積み重ねてきたその歴史を通じても進化していく,ということをあらためて認識したのが今節だったようにも感じます。