CHANGE OF THE PACE.

最終ラインからじっくりとビルドアップをしながら段階的に攻撃リズムを早め,そのリズム変化の中からショートレンジ〜ミドルレンジ・パスをつなぎながらペナルティ・エリアへと侵入していく。


 残念ながらゴール奪取というフィニッシュには結び付けられなかったものの,前節スコアレス・ドローに終わったというネガティブなイメージを払いのけることができたのではないか。そんな印象を持った攻撃でした。


 前半は,中盤からの積極的なプレッシングから攻撃を仕掛けるという形が比較的多く見られたように受け取れましたが,それだけに攻撃リズムが単調になっていたように感じます。そのリズムに明確に変化があったのが,冒頭に触れた25:00前後からの波状攻撃,そのきっかけとなったパスワークだったように思うわけです。


 積極的にボール・ホルダーに対してアプローチをかけ,高い位置からのターン・オーヴァを狙う。


 2004シーズン以降,浦和の典型的な攻撃スタイルとして定着していますが,縦の速さが時に単調さを作り出してしまっていたように感じます。時にボールを落ち着かせることで攻撃リズムに変化を付け,縦への速さをより印象付ける。そんな攻撃が見られたのではないかな,と。


 また,決勝点を奪取することとなった攻撃は“足下”をイメージした攻撃スタイルから,浦和のDNAとも表現できる“スペース”を強く意識した縦への突破から生まれたものでした。ポゼッション,パス・ワークから相手を崩すことも重要な要素となり得るものですが,同様にスペースを強く意識した突破を並行して使っていくことで,リズムを掌握したいところです。前節の名古屋,今節の福岡のように全体をコンパクトに保ちながら中盤でのプレー・スペースを狭め,中央をしっかりと固める組織戦術を徹底する相手が増えていくはずです。そんな相手を崩すためには,リズムを操ることで相手のディフェンス・ラインを揺さぶっていくのが効果的であろう,と。


 今節の決勝点,そこにつながる一連の攻撃は,ひとつのヒントをチームにもたらしたのではないか,と見ています。