06スペック。

ワンシーズンを戦い抜いた結果から,どの部分に改良の可能性(あるいは必要性)があるかを割り出し,ライバル・コンテンダーがどれだけスペックを引き上げてくるか,という相対論も勘案しながら要求スペックを決定していく。


 その決定されたスペックにどれだけ近付けるか,が,テクニカル・スタッフの手腕ということになるのだろう。


 ・・・レーシング・マシンの進化,その過程をごく大ざっぱに書き出せばこんな感じでしょうか。


 新加入選手記者会見(浦和オフィシャル)2006シーズンの体制について(浦和オフィシャル)というリリースを見ると,ちょっと重なる部分を感じたりするわけです。


 ただ,レーシング・マシンと大きく違うところがあって,ワタシはその部分に大きな意味があると思ってもいます。


 ファースト・チームのパフォーマンスを引き上げるためのアプローチとして,ひとつには即戦力の補強があると思います。ワシントン選手,相馬選手や黒部選手,そしてもちろん小野選手の移籍加入はこれに該当するはずです。トップチームが目指しているフットボールのスタイル,そのスタイルをより明確に,緻密にしていくために必要なタレントとして期待されているはずです。
 もう一方で,比較的長期的な視点に立って「戦力育成」的な選手獲得,というものが特徴的であると思います。昨季,予想外の戦力流出という事態に陥りながらも決定的な悪循環にはまり込むことなくシーズンを乗り切ることができたのは,スターター(あるいはリザーブ)定着を目指す選手たちが与えられたチャンスを絶好機と捉えていた,という部分があるように感じます。
 当然,能力ある選手を多く抱えているということは,コーチング・スタッフのメンタル・マネージメントは今まで以上に緻密,かつ繊細であることが求められると思います。とは言え,2006シーズンに考え得るタイトルをすべて奪取する,という姿勢を明確にし,その先にあるACLを「参加する」のではなく「奪取する」というのであれば,「総合力」こそが求められるはず。この点も注目ポイントかな,と思います。
 さらに言えば,チームが作り出す「強さ」が特定の選手のタレントに多くを依存した“ワンオフ”なものであるとすれば,世代交代によって新たなタレントが加入したと同時に「強さ」が大きく削がれることにもなりかねない。チームとしてのスタイルを“DNA”のように継承させていくには,才能を持った若い選手を継続的に育成していくことも同時並行的に求められていくはずです。
 その意味で,ここ数季の傾向は「チーム内競争によってファースト・チームのパフォーマンスを高みで安定させる」という方向性と,「有望な若手選手を積極的に獲得する(ファースト・チームへ引き上げる)ことでチーム・スタイルをしっかりと継承させる」という方向性とが良い状態でバランスしているな,と感じます。


 “06スペック”が真価を発揮するまでいましばらくの時間があります。どういうスタイルがどういうタレントによってピッチに表現されるのか,かなり楽しみであります。