福野さんの至言をあなたに。

・・・いつものことなんですけどねェ。


 物価が高いなど,否定しきれない(同情できる)部分もあって,思わず「あったあった」と苦笑いしたくなるような話もあります。ありますけど,実際に住んでいた立場としては「ここまで言われなければならない憶えはねェよ。」,と思ってしまうのです。


 ・・・失礼しました。杉山センセのコラム(gooスポーツ - NumberWeb)に対する個人的な思いをちょっと書いてみようか,ってわけなのです。でありますれば,フットボール関係の話と言うよりも,ロンドン案内のようになってしまいますが,ご容赦のほどを。


 さて,博覧強記で知られる自動車評論家の福野礼一郎さんが,こんなことを書いていたことがあります。ちょっと引用しますと,

 日本にやってくる外国人は西洋人に限らずみんな自分の体にしみ込んだ観念を乗り越えている。あなたにはその逆ができるのだろうか。慣例や習慣や風習や常識、親から無理矢理受け継いだ観念を捨てられない限り絶対に無理だろう。それを捨てるためには相手を理解しなくてはいけない。理解し納得するためには・・・(中略)・・・自分の常識を乗り越えなくてはならない。(出典は,くるまにあ2003年12月号 「クルマにいいこと無駄なこと2004」特集後口上)


というものなのですが,この福野さんの考え方は大事なものだと思うのです。


 そして,今回の杉山センセのコラムには,「相手に対する理解」というものをあまり感じることができないのです。外国での出来事を自分のスタンダードにだけ当てはめて,「こうあるべきなのに・・・」という感じがします。そういうあり方は,正直感心しないものです。


 チューブにしてもあまり正確な運行がなされているわけではありません。旅慣れている方にこんなことを言うのも気が引けるけれど,車内アナウンスがないのはある意味チューブの標準装備なのだから(車内アナウンスと言えば“Mind the gap (doors).(「ドアとホームの隙間(開くドア)にご注意ください」)”とか,“All change, please.(「お乗り換えください」)”程度だったこともあるわけで。),先頭車両の行先表示だけは見ておくものなのです。確か,アールズ・コート駅やエッジウェア・ロード駅には乗り換え用の表示板もあったはずだし。


 要するに,使う側が「余裕を持った動き方」をすれば良いだけ,なのです。


 それと,いくら列車運行が当てにならないからと言って,時間が問題になる空港へのアシとしてタクシーを使うのは極力避けた方が良いでしょう。恥ずかしながら私も1回やらかしたので,実体験として理解できるところです。


 最初は宿を取っていたラッセル・スクエアから,パディントンへタクシーを使おうと思っていたのです。旅の相棒が持っているラゲッジも大きかったし,LHRへの安価な移動手段であるピカデリー・ラインを使うのを躊躇したのです。そこでチューブではなくて,ヒースロー・エクスプレスを使ってLHRへと移動しようと思ったわけです。で,呼んだブラックキャブのドライヴァ氏がなかなかいいひとだったことを良いことに,LHRまで,とつい行先変更してしまったのです。そのおかげで見事にファイナル・コールの対象にはなるし,ラゲッジはボーディング・ブリッジから地上エリアへと通じる,シューターに放り込まれるし。


 私のことはともかく,LGWに行くならばロンドン・ヴィクトリア駅からガトウィック・エクスプレスを利用するのが定番です。ブラックキャブを使うならば,必要最低限に止めた方が,リスクを最小限に抑えることができるはずです。


 また,お約束の「食」関係ですけれど。


 確かに,美味しいものをリーズナブルに,となると難しいですね。


 ならばチャイナ・タウンやエスニック系のお持ち帰り,という手を使うのも一策でしょうか。たとえばパディントンからクイーンズウェイ界隈にはインド系の料理店も結構あるし,中華でもそこそこの味を持った店があるし。場合によっては,主菜をブラウン・エール,あるいはギネスにする(本来の主菜を副菜以下の扱いに自分の中で割り切ってしまう)という考え方に一気にシフトしてしまっても良いな,と思ったりします。


 「日本だとこんなことないのに・・・」って思ってしまうと,途端にゲンナリしてしまう。


 だけど,物差しを現地のひとのものに近付けてみる(意識して現地の常識に合わせてみる)と,そんなにイライラすることもなくなってくるのではないでしょうか。福野さんの言葉は,深く意味をとることもできますから難しく解釈することも可能ですけれど,海外旅行するひとたちに向けたアドバイスとしても十分通用するし,海外でステイを楽しむ極意,のようなものを提供してくれるようにも思うのです。