自律と成熟。

先のエントリでは,「エル・ゴラッソ」を読んでいたことを書いておりますが。


 となれば,寺下さんが書いたコラム(5面)に触れないわけにはいきますまい。


 大宮のホーム・ゲームでありますから,マッチ・リポートを担当した古屋さんのスタンスは大宮を基盤としていますが(それゆえ,文末の表現には若干の他意を感じたりもするのだけれど),「『大人のチーム』への確かな胎動」と題されたコラムには,浦和がさらなる段階に到達するために必要不可欠な要素,そしてその要素を持ち始めたかも知れない,という印象を受けます。


 フットボールという競技は,“アソシエーション”であろうと,“ラグビー・ユニオン”であろうとピッチ(フィールド)に立つ選手すべてが自律的に考え,判断し決断していくだけのインテリジェンスを持たなければ,チームが本当の意味で機能することはない,と思います。もちろん準備段階においては,指揮官の描く戦術イメージを選手が共有し,チームとしての意思を作り上げていくわけですが,時に各選手のイメージが微妙にズレを見せたり,相手によって自分たちのストロング・ポイントが抑え込まれるケースが出てきます。その時に,誰が状況を打開するのか,と言えば,実際にプレーしている選手たちにほかならないわけです。フットボールにおいては,指揮官がテクニカル・エリアの最前線まで飛び出し指示を飛ばすことはできるものの,実際に考え,修正するのは選手です。


 なぜ,いままでのシステムが今節においては機能しないのか。指揮官がシステムを微調整してきた意図はどういうものか。そして,その意図に応えるためにどう動くべきなのか。


 寺下さんが今回のコラムで取り上げた長谷部選手は自律的に判断し,前半において膠着した状況を打開にかかった。そして,チーム全体も長谷部選手と同様,前半の膠着した状況から何かを感じ取り,ハーフタイムでの修正の意図を理解してチームとしてのダイナミズムを取り戻した。


 ある意味,試行錯誤の中で総力戦を戦ってきたのが今季,と評価して良いように感じます。ただ,その試行錯誤はチームに「自律的な判断」という,真に強いチームにとって必要不可欠な要素をもたらそうとしているのではないか,とも思うのです。寺下さんが文末に書いている観測,私も同じ観測をしたいと思います。現在首位に位置するクラブとの直接対決が,「勝ち点6」に相当する重要なゲームになりつつあるのだから。