企業チームを考えてみる。

つい最近も,野口、陸上部ぐるみで移籍か(共同通信−スポーツナビ)という記事が出たりして,スポーツと企業との関係を考えてしまいます。


 結構ここでは,マリノスに絡めてとか,あるいはトップリーグと絡めてスポーツと企業の関係に関して書いておりますが,今回はこれ以上ない直接的なタイトルを掲げ,ちょっとこの問題だけについて書いていくことにします。


 最初にいきなり結論じみたことを言ってしまえば。


 まず,企業がクラブ活動としてスポーツに関わることが「そんなに悪いことだろうか。」と思っております。少なくとも,“プロフェッショナル”として活動することが難しい競技領域もあるわけで,そういう競技に取り組んでいるアスリートに練習環境や活動環境を提供してくれているだけでも,充分感謝の対象だな,と思うのです。


 しかし同時に。


 「地域との関係性をどのように構築するつもりか,地域に対してオープンであろうという意識があるのか」と問い詰めたい気分でもあります。


 彼らのやり方は,アスリートやコーチング・スタッフ,練習環境を含めて「囲い込んでいる」かのように見えるし,自分たちが活動している地域のコミュニティに対して開かれている印象があまりにも薄いように思うのです。持てるリソースを積極的に地域の人たちに開放すればいいのに,と思うのです。
 グローバリーの場合はちょっと難しいかも知れませんが,「総合スポーツクラブか!?」と見紛うかのような施設を誇る会社もあると聞き及んでおります。そんな施設を,従業員(と,その関係者)の皆さんだけに独占させておくのはリソースの有効利用から考えればもったいないと思うのです。
 当然,利用したいと思うひとからは「会費」をいただけば良いのです。トップクラスのコーチング・スタッフから指導が受けられるとなれば,恐らく会員になりたいひとたちは多いでしょう。自然と,その施設を中心として出来上がっていくクラブは「市民クラブ」的な性格を帯びることにもなってくるのではないでしょうか。最初はこのように,「市民クラブと実業団とのハイブリッド」だっていい,と思うのです。実業団の持てるリソース,そして大きな資金力は決して無視できないのですから.練習環境などのリソースを活用しながら市民クラブに転換した例としては,新日鐵釜石を母体とする釜石シーウェイブスがあります。彼らのオフィシャル・サイトを見ると,活動はアマチュア・ベースではあるけれど,イングランドの下部リーグに所属するクラブを彷彿させるような,地域に愛されながら活動している姿が見えてきます。そして,新日鐵も完全に釜石から離れたわけではなく,しっかりとシーウェイブスを支えてくれている。新日鐵,を冠していた時代から比較すれば支援規模は小さくなったかも知れないけれど,支援を続けてくれていることを評価したいな,と思うのです。現在彼らはトップイーストで活動していますが,早くトップリーグに上がってきてほしい,と思っています。そして,彼らの手法は間違いなく,ラグビー界が「完全オープン化」に踏み切るときの大きなヒントになるはずだ,と感じています。


 理想はもちろん重要です。


 市民が支えるクラブが,大企業のスポンサードを受けながらプロフェッショナル・アスリートを支える形は最も理想的だと言って良いと思います。
 しかし,現実的な問題として,どれだけ多くのひとたちが「会員」として(ということは,毎年一定の金額を支払って)そのクラブを支えてくれるのか,という問題もあります。メンバーシップが機能しなければ,スポンサーに対する訴求度も上がっていかないし,結果としてクラブを支えていけるだけの財政的基盤を維持できない,ということにもなりかねません。また,クラブ・サイドにあってはその会員さんたちを満足させるだけの施設を持てるかどうか,や持っているチームに対して充分な練習環境を整備していけるのか,という問題もあります。市民クラブとはいいながら,一定程度以上の初期投資は重要な要素です。


 その意味で,bjリーグの「正面突破」を地で行くかのような実験,プロフェッショナルへの本格移行も当然に興味深いのですが,それ以上にJBLスーパーリーグトップリーグがどういう過程を経てオープン化(プロ化)に踏み切るのか,実業団チームがどれだけ地域に向けてオープンな形に移行できるのか,実質的なプロフェッショナルとしての活動が担保できるようになるのか,もまた興味深いな,と思っております。