THE RIGHT SPIRIT

“PLAY TO THE LIMIT, IN THE RIGHT SPIRIT”.


 「ミュンヘンの悲劇」を乗り越え,マンチェスター・ユナイテッドFCに“ビッグイヤー”をもたらした名将,サー・マット・バスビーの言葉であり,浦和にとってはアンブロ時代のユニフォーム,その裾に刻まれていた言葉でもあります。


 鹿島戦,そして広島戦に共通するものとして,ふと頭に浮かんだのがこのバスビー卿の言葉でした。


 最初,“The right spirit”というフレーズ,そして「正しい精神」という訳語には正直わかりにくさを感じていたことも確かで,バスビーさんはどういう精神状態を「正しいもの」としていたのか,具体的にイメージできていなかった部分があります。
 一方で,フットボール・ジャーナリストである湯浅健二さんはコラムの中で大分戦では“モティベーション・クラック(やる気のヒビ割れ)”があった,というニュアンスのコメントをされています。


 一方で,大分戦と広島戦は対極に位置しているように感じます。そして,そのなかから「正しい精神」が何を意味しているのか,見えてきたように思うのです。


 個人的な解釈ですし,“The right spirit”という言葉を正確に訳したものではないですが,「相手に対して敬意を払いつつも,常に挑みかかる姿勢を持ち続けること」が恐らくバスビーさんが考えるゲームに臨むための精神状態であり,「正しい精神」の中身ではないかな,と思っています。


 残り10ゲーム。


 当然,実際のゲームで出てきた戦術的な課題に対する修正も重要な要素ですし,どういうプレーをイメージしておくべきか,というイメージの共有も重要です。しかしそれ以上に,相手に対してしっかりと敬意を払いつつも,全力で叩き潰すべく挑みかかる姿勢を失わないことこそが,90分間プラス100%のファイトを続けるために,そして主導権を相手に譲り渡すことなく勝ち点3を奪取するために最も重要な要素になってくるはずです。
 ある意味当然のことを言っているに過ぎないフレーズですが,常に意識し続けていないと時にブレを生ずる。我らが指揮官がよく使う「勝者のメンタリティ」も,恐らくは同じ意味を持っているに違いない。重みを持った言葉だな,と感じます。