再び、接近戦へ。

清尾さんのコラム(Wepsうち明け話),正確には清尾さんがコラムの中で引用した福田正博さんのフレーズを読んでいて思い出したことがありまして。


 確か,1988シーズンのオーストリアGP(ザルツブルクリンク)での500ccクラス決勝だったか,と思います。


 ウェイン・レイニーワイン・ガードナーケビン・シュワンツ


 アメリカンにオージーと,時代を感じさせる国籍であります。
 トップクラス・ライダーが猛烈なまでの接近戦を挑みながら首位争いを展開する。時にはダート・トラッカーのようにリア・タイアを猛烈にスライドさせながら最終コーナーを立ち上がり,ホーム・ストレートで前車に食らい付く。第1コーナーへの侵入でインサイドに飛び込み,ポジションを上げていく。
 パスされたライダーも緩やかな高速カーブが続くセクションを巧みに利用して集団に追い付き,スリップ・ストリームから首位をうかがう。そんな熾烈な接近戦が展開されたGPとして,いまもワタシの記憶に残っています。


 最終コーナーをドリフト状態で立ち上がっていったのは,スズキのエースであるケビン・シュワンツでした。あたかも,このレースの勝負所がこの周回にある,という覚悟を路面に叩き付けるかのように。
 タイアが悲鳴を上げようが上げまいが,首位を現実的なものとするためには勝負をかけなければならない瞬間が必ず訪れる。その時には躊躇なくスロットルをワイド・オープンする。トップに上り詰めようとするライダーの矜持を見た瞬間だったように思うのです。


 リーグ戦は終盤戦に差し掛かっている段階であります。


 「勝ち点6」の意味を持つゲームも残っているだけに,現段階での“10差”を必要以上に重く受け取る必要はないと思う。いま必要とされていることは,決して特別なことではない。リーグ戦を戦うための定石通り,目前にあるゲームに集中し,全力で勝ち点3を奪いに行くことのみが要求されていると思う。その先にあるものは,近付いてきたときにでも考えればいい。


 再び,接近戦を仕掛けるためにもラッシュを掛けるべきタイミングは今をおいてない。そんなことを確認できたような気がします。