対FC東京戦(05−19)。

質的に,浦和の攻撃が変化してきている。


 より正確に言えば,浦和が持っている攻撃面でのストロング・ポイントがその厚みを増し始めているように感じる。そして,その厚みは昨季獲り逃したものをつかみ取るために,重要な厚みになっていくように思う。


 ヤマザキナビスコカップ準々決勝あたりから「予感」めいたものを感じていたが,今節においてはその予感がしっかりとした像を結んだ。そんな実感を持ったゲームだったと感じている。


 言うまでもなく,前線,中盤高い位置からの厳しいファースト・ディフェンスによるボール奪取からのショート・カウンターというスタイルも,浦和の攻撃を構築する重要な要素である。手数をかけずにボールをエリアに運び,最終ラインが守備体制を再び整えるでの時間帯,数的優位を存分に生かしながらゴールを奪う,というスタイルによって基本的には得点を重ねてきたように思う。しかし,最近は攻撃にかける手数が増えつつあるのではないか,と感じる。
 ピッチをフルに使い,相手守備ブロックを大きく左右方向へ引き出すサイド攻撃は言うまでもなく,相手最終ラインを上下方向に揺さぶる動きが目立ち始めたように思う。ポンテ,マリッチの加入により前線での流動性が増し,積極的にレジスタを前線に送り出す動きが出てきたように思う。昨季以来の武器である「プレッシング」に積極的な「ポジションチェンジ」が加わることによって,相手守備ブロックのマークを引き剥がす動きが目立つようになってきた。


 リーガ・エスパニョーラを強烈に意識し,「攻撃的」であることをテーマとしながら,実際に浦和と対峙する際にはイングランド,あるいはスコットランドの伝統的戦術を駆使しているかのような印象を与える相手は,常に最終ラインを低い位置に保ち,なおかつ浦和が押し込んでいる時間帯には最大7人近くの選手がエリア付近にポジションを取り,浦和の攻撃を封じることを意識していたように思う。
 いままでの「縦」方向へのシンプルな突破を図るチーム・スタイルならば,それもあるいは有効な防御手段だったかも知れない,しかし,守備ラインを「前後方向」に揺さぶるポジションチェンジが目立ちはじめたことで,中盤に位置している相手マーカーのポジションを不明確なものにすることに成功していた。同点に追い付いた永井のゴールにしても,後半追加点を奪ったロブソンのゴールにしても,表面的には昨季のようなカウンター主体のスタイルからのように思われたが,90分間を通しての攻撃の在り方には明らかな変化の胎動を感じ取ることができた。


 いつものように,1日遅れで書いております。


 中断期間明け直後のゲームであること。
 カップ戦準決勝2ゲームに対してポジティブな影響を与えるためにも,決して落とすことのできない連戦初戦ということで,単なる1/34以上の意味を持ったリーグ戦だと感じていましたが,逆転という形で「勝ち点3」を奪取してくれた。何よりもまず,評価しなければならないことだろうと思います。


 同時に。


 チームの中核選手をシーズン半ばにして放出し,チーム自体を再構築する必要に否応なく迫られた。当然,戦力的な補強に伴って戦術の再確認と同時にコンビネーションの熟成,強化を「実戦を通して」徹底していかなければならないわけです。
 一方では「勝ち点3」という結果を追い求めながら,他方で「チームの熟成」という部分も重要視しなければならない。難しいハンドリングを強いられていただろうことは容易に想像できるところです。
 ヤマザキナビスコカップ準々決勝第2戦,ロブソン・ポンテ,トミー・マリッチが実戦の場に登場した最初のゲームでは確かに熟成不足を感じさせる部分もあったけれど,短期間にコンビネーションが熟成度を高め,チームが従来のスタイルに加えて,新しいストロング・ポイントを手にする可能性を感じさせるまでになってくれた。


 昨季の攻勢を支えた縦への圧倒的なスピードだけでは対処できない相手に対して,どのようなギアチェンジができるのか。ゲーム中であろうと,柔軟に攻撃スタイルを切り替えていくことで「結果」を追い求める。昨季,リーグ戦では必要性を感じなかったことだけれど,チャンピオンシップという場面では痛感させられたことです。
 攻撃オプションを増やすという意味で,新たなスタイルが見えてきたことは大きいと思っています。そういう部分を平然とやってのけつつあるチームの柔軟性とともに,強かさを感じることができたゲームだったかな,と思っています。