らしくて、らしからぬ準決勝(第91回全国高校ラグビー埼玉県予選・雑感)。

「勝ちたい」という思いと,「負けたくない」という思いと。


 同じように見えて,でも微妙に違う思いがフィールドを通して感じられるから,トーナメントにはリーグ戦とは違った魅力があるわけですが,この準決勝はそんな思いが真正面からぶつかり合った,という印象を持ちます。


 ゲームのことは,追って書こうと思いますが,ちょっとおおまかに雑感を書いておこう,と思います。


 深谷にしても,正智深谷にしても,シンプルに「決勝戦へと駒を進めたい」という意識だけでこのゲームを戦っていたとは思いません。「勝ちたい」という意識だけで,対戦相手を抑え込める,と思っていないから,慎重にゲームを動かそうと意識するし,攻撃面だけに意識を傾けてしまって守備バランスを崩す,相手が描いているかも知れないゲーム・プランへと嵌り込むわけにはいかない,と。そんな意識も相当に強かったのではないでしょうか。要は,浦和,あるいは慶應志木には「負けたくない」という意識もかなり強かったのではないかな,と思うのです。


 このことを裏返せば,浦和,そして慶應志木近鉄花園への指定席切符を争う,その勝負権を持っていると彼らが意識している,ということにもなるはずです。もちろん,Aシード校同士の対戦ですし,当然の意識,とも言えるわけですが,バランスを崩せば隙を突かれる,という意識を強く持っているのだとすれば,浦和,あるいは慶應志木との距離感は,アウトサイドが思うよりも縮まっているのではないかな,と感じます。


 であれば,浦和や慶應志木には,この準決勝での「僅差」を埋めるためのアプローチを突き詰めていってほしい,と思います。浦和であれば,トータル・バランスをどう攻撃面で崩していけるか,という要素であったり,慶應志木であれば,自分たちの攻撃リズムへと持ち込むために,何が必要なのか,という要素であったり。浦和が,慶應志木近鉄花園への切符をつかむ,そんな時期は決して遠くはないはずだし,逆に遠くあってはならない,と思っています。