対東京ヴェルディ1969戦(05−31)。

今節は,「リズム」がある意味キーワードになるゲームだったのではないか,と感じている。


 前半,立ち上がりからゲームの主導権を握ったのは浦和。


 右サイドからの攻撃が機能し,相手守備ブロックを横方向へ引き出す。そこから中央へ折り返し,FW,あるいはトレクワトリスタが守備ブロックの綻びを突くようにエリアに侵入し,フィニッシュを狙う。オフサイドジャッジメントを受けたプレーも,そして先制点を叩き出した攻撃も右サイドの突破を起点とする「サイドを意識した攻撃」だった。
 また,ダイレクト,あるいはツータッチ程度のパス・ワークが前半には多く看取できたように思う。中盤,前線がダイレクト・パスを通し得る距離感を保ちながら,相手守備ブロックをコンビネーションの中から崩していく。そんな意図が比較的明確に見えていたように感じる。ただ,前半においてはパスミスやコンビネーション・ミスが攻撃を中途半端なものに終わらせ,相手にターンオーヴァの起点を提供してしまっているような部分があり,その点は少々気になった。


 後半,そのリズムを引き継ぎながら攻撃的にゲームを展開していくのか,と考えていたが,ゲームのリズムが微妙に停滞しはじめているような感じを受けた。明確なものではなく,非常に微妙なバランスのズレがどこかにあるような,そんな感じを受けた。
 具体的に見れば,前半にも見られたコンビネーション・ミスからの逆襲をどう抑えていくのか,という部分にズレが感じられたように思う。攻撃面においてリズムを作り出していくべき中盤でのファースト・ディフェンスのタイミングがちょっとずつズレを生じ,ボール・ホルダーを高い位置で止めることが難しくなっていく。また,ある程度自陣に戻って陣形を整えながらコンパクトに相手ボール・ホルダーに対してプレッシャーを掛けていく(チームとして,「リトリート」を共通して意識する),というわけでもないから,最終ラインにかかる負担が前半に比較して相対的に大きくなってきているように感じられた。


 ともすれば,「心理的な隙」なのかも知れない。


 その隙を突かれるかのように同点に追い付かれ,その後の主導権をどちらが握るのか,がゲーム自体の帰趨を決めるような流れになった。そして,その流れを引き寄せたのが,マリッチの角度のない位置からのシュートだった。このシュートがゴールマウスを捉え,主導権を奪い返すことに成功する。この追加点を奪取してからはチームが本来持っているリズムを取り戻し,相手に傾きかけたゲームの流れを取り戻していく。
 対して,同点に追い付き,リズムを引き寄せかけた相手は,ゲームを恐らくは決定付ける要素になるであろう2点目を奪われたことで心理的に安定を欠いたのか,ゲーム終盤には半ば自滅的に2人の退場者を出し,結果的には4−1と3点差を付けられることになる。


 ゲーム・スタッツ(J's GOAL)を見る限り,ほぼ互角の展開とも評価できる。しかし,ファイナル・スコアとしては3点差が記録される。
 この得点差を生んだのは,ひとつには攻撃のスタイルとして今節ではサイドを比較的強く意識した浦和と,縦へのスピードに多くを依存したヴェルディ・サイドという見方ができると思うが,もうひとつには「いつも通りに戦う」ことを実践できたか否か,という心理的な部分があるように思う。心理的に安定を欠き,結果としてリズムを失ったヴェルディに対し,冷静にリズムを引き戻そうとトライし,それに成功した浦和。一時的にせよ,厄介なゲームになりかけたゲームにおいて勝ち点3を奪取できたことは,間違いなく追撃態勢を崩さないためにも大きいと思う。


 やはり,「リーグ戦」であります。


 リーグ戦も最終盤となれば,一気に駆け抜けることが難しくなってくる。必ずしも「上位対決」だけが難しいわけではなく,リーグ下位に沈み,「降格」という状況が現実味を帯びているクラブとの対決の方がむしろ難しいとも思えるからです。その意味で,対戦相手がどう,ということはあまり意味を持たないように思えます。
 そして,再び上位との差は詰まったわけです。


 どのクラブにとっても,ひとつのゲームが持つ重みは変わらないはずだけれど,その重みを受け取るひとの気持ちによって,その重みは必要以上に増したりするし,心理的な負担にもなりかねない。そんなプレッシャーを跳ね返して,「いつも通りに」眼前のゲームに集中していけるかどうか,が最終盤の戦い方で最も重要なのかな,と思います。


 そんなことを考えると,後半,同点に追い付かれてからの「危険な9分間」を何とか乗り越え,ゲームの流れを再び取り戻したことは間違いなく次につながるはずだ,と思います。最終盤にあって,簡単なゲームなどひとつもないでしょう。今節のように,一時的にせよリズムを奪われることもあるに違いない。それでも心理的に追い込まれることなく,チームとして持っているスタイルを貫けばいい。それこそが,相手の嫌がることだろうと思うから。
 あと3節。勝ち点3を奪取する,という強い意思を持って,普段通りに「相手の嫌がるプレーをし続ける」ことだけを意識したい。結果は後からついてくる。