対徳島戦(14−27)。

ボールがどこまで動いてくれるのか,予測が相当に難しい。


 予測が難しいのみならず,ボールがピッチの影響を受けないエリアを見つけるのが難しい。ボールをミートした瞬間,足下からスプラッシュが上がる。パスを繰り出そうにも,予想できないタイミングでボールに急激なブレーキが掛かり,ボールは動きを止めてしまう。浦和が狙うフットボールを表現することは事実上不可能,と言っていい。であれば,ボールを浮かせた状態で「エリアを奪いに行く」戦い方へと切り替えざるを得ない。ここまで浦和が狙ってきた戦い方からは大きく離れた,だけでなく,ラグビー的,とも言える戦い方を表現せざるを得なかった。「普段着」とは違う戦い方を基盤としながらも,この基盤を揺るがすことなく勝ち点3を積み上げることができた,ということが最も大きな収穫ではないかな,と思うのです。


 繁忙期はとりあえず脱したにもかかわらず,相変わらず更新頻度が低空飛行状態,なおかつ遅筆堂状態も絶賛継続中で申し訳ない限りでございます,の徳島戦であります。


 ボーイズマッチの段階で,今節は対戦相手以外にも「戦わなくてはならない相手」があるな,と感じさせる,そんなコンディションでありました。であれば,今節は浦和が狙う戦い方を表現するための「前提条件」が抜け落ちていた,と見ることもできるはずです。


 日曜日の中野田,そのピッチ・コンディションによって,いつもとは大きく違う戦い方を基盤としながら勝ち点を積み上げる必要に迫られた。そこで導き出されたアプローチが,「エリアを奪いに行く」戦い方,ある意味でラグビー的なボールの動かし方へとつながっていたものと思います。たとえば,いつも通りにビルドアップをしようとすれば,予想外な位置でボールにブレーキがかかってしまう可能性が高かったはずです。ウォーミングアップ・セッションの段階でも,いつも通りのミドルレンジ・パスではパスを受けるべきフットボーラーにまでボールが届いてくれない状態であることが見て取れました。そんな状態で,「普段通り」の戦い方をしてしまえば,相手にボール奪取位置を自分たちから提供することになりかねない,そんなピッチ・コンディションだったわけです。パス・レンジをしっかりと自分たちでコントロールするためには,ボールを「浮かせて」コントロールすることが求められる。加えて,リスク・マネージメントとのバランスを意識して,相手のエリアで攻撃の起点を作りたい。最終ラインやセントラル・ミッドフィールドのポジショニングなどからも,シンプルにボールを縦に動かすことで攻撃を組み立てると同時に,ボール・コントロールを失ったときのリスク・マネージメントを意識する,という「いつもとは違う戦い方」の意識が見て取れたように思います。


 この意識を,先制点を奪われた直後の時間帯であっても失わなかったこと,が今節での鍵ではないかな,と感じます。


 おおざっぱに試合の流れを振り返るに,立ち上がりの時間帯から,いつもとは違う戦い方ではあるとしても,自分たちが主導権を掌握する形で試合を動かしていたように感じます。ならば,どのように自分たちの戦い方を調整し,その調整した戦い方をひとつのイメージに束ねてきたか,が明確に感じ取れたように思うのです。


 しかしながら,フットボールという競技は理詰めのアプローチを徹底することが結果と直線的に結び付いてくれるとは限らない,というのも確かです。先制点を奪う,という意味で言えば,相手に先手を取られてしまった。相手ボールホルダーが右サイドへと繰り出した縦へのフィード,そのフィードは,雨によって大きな影響を受けていた中野田のピッチにあってごく例外的な,水の影響をそれほど受けていないエリアを狙い澄ますかのようなものだったのです。いつ,パスに予想外のブレーキが掛かってしまっても不思議のないピッチで,この局面だけは不思議とボールにブレーキが掛かることがなかった。数少ない好機を相手はモノにした,と言うべきでしょう。


 試合の主導権を掌握しながら,スコアを動かすという意味で言えば相手の後手を踏むことになった。そこで動揺するのではなく,今節において狙う戦い方を徹底することができた。高い位置に攻撃の起点を置き,そこからシンプルにボールを動かしていく。ユニットによるコンビネーションから相手守備ブロックを揺さぶり,ゴールを奪うことができずとも,高い位置でリスタートの起点を奪うことができれば,得点を奪うチャンスへと結びついていく。立ち上がりの時間帯から,しっかりとピッチに表現されていた形で,しかも失点を喫した時間帯からそれほど時間を置かずに試合をイーブンな状態へと引き戻すこととなるFKにしても,追加点(にして決勝点)を挙げることとなるFKにしても,チームとしての狙いが結果へと結び付いたものではないかな,と思います。


 端的に書いてしまえば,今節は「浦和が狙うフットボール」からは程遠い,けれど「勝ち点3」を着実に積み上げることが求められていた,という意味で難しい試合ではなかったかな,と思います。加えて,試合を動かす,という意味で言うならば相手の後手を踏みもしています。これまでの浦和を考えるならば,後手を精算できるかどうか,という見方もできた,かも知れません。知れませんが,日曜日のファースト・チームは冷静に状況を判断しながら,普段着とは大きく違う(ラグビー的な)フットボールで結果を引き寄せるためのアプローチを繰り返していたように思います。そして,勝ち点3を積み上げる,というミッションをクリアしてみせた。今節積み上げた勝ち点3は,ライバルとの勝ち点差を広げるという意味で重要な意味を持っているのは当然ですが,チームがどれだけの柔軟性をもって試合に臨み,結果を引き寄せていけるのか,という意味でも,決して小さくない意味を持った「勝ち点3」でもあるだろう,と思っています。